一級建築士が教える後悔しない家の作り方

一級建築士事務所アトリエPHILOSOPHY

2018年10月19日 16:21



家づくりは、多くの方にとって一生に一度の大きな買い物です。

それほど大きな買い物で、しかも人生で一度きりとなれば、絶対に後悔はしたくないですよね。

ですが、家づくりにおいては、建てた後に後悔するケースは決して少なくはありません。

たとえば、3000万円という費用をかけて家をつくったとしても、それだけお金をかけたから良いものができるのかというと、そうではありません。

同じ3000万円であっても、

後悔してしまう3000万円の家もあれば、
心のそこから満足のいく3000万円の家もあるのです。

ですから、予算をかければ、満足のいく家ができるというわけではなく、様々な視点から家づくりを吟味していく必要があります。

また、予算を最初に決めた場合、その3000万円という予算にあまりにも固執しすぎたため、実際に家がたってから、「あと100万円予算を増やしておけば、もっといい家ができた…」と後悔してしまうケースもたくさんあります。

しかし、これらのことは実は家を建てている段階や設計している段階で、施主さんが自ら気づくことは難しく、出来上がって住んでみてから分かるものなのです。

「3回建てないと理想の家にはならない」なんて言葉がありますが、そのくらい、予算をどのくらいにするのか、その予算を使ってどんな家をつくるのかを判断するのは難しいと言うことです。

そこで、今回は、どのような点に気をつけて家づくりをしていけばよいのか、そのポイントをお伝えしていきます。

このポイントをしっかりと押さえてさえいれば、まず大きく外すことはありませんし、あなたが心の底から建ててよかったと思えるような家をつくることができます。

多くの人がやってしまいがちな後悔する選び方

まずは、そもそも、なぜ建てた後に後悔をしてしまうのか、その大きな原因から見ていきましょう。

後悔する原因1:予算ありきで、そこに収まるように考えてしまう

最初に一体どのくらいの予算を家に使えるのか、その資金計画を立てることはとても大切です。

何年にわたり、毎月どのくらいのローンの返済をしていくなどをしっかりと考え、最終的に建築費用を算出していきます。

そして、次に建築費用をもとに家のプランや設計図をつくっていくことになるのですが、実はこのプランを練る段階で、あまりにも予算に縛られすぎるとよくありません。

たとえば、

予算がこのくらいしかないから、、、

「この家具は作れないね」
「この無垢の木を使うと高くなりそうだからやめておこう」
「本当はここに大きな窓をつくりたいけれど、普通の窓でいいかな」

という具合に、予算に縛られるがあまりに、最初から妥協に妥協をかさねてプランをたてていってしまいます。

これが、後悔する大きな原因となります。

「本当は、こんな家がいい」「フルオーダーメイドのキッチンがいいなぁ」と誰しも新しくつくる家に対して、色々な夢が膨らんでいるはずですよね。

それにもかかわらず、妥協に妥協を重ねて家をつくれば、当然ですが、心の底から満足のいく家を作ることはできません。

最初からあ予算の枠に収まるように誘導する多くの業者

なぜ、このようになってしまうのか。

その一つの要因として、相談している設計士さんや工務店さんの誘導があります。

家を設計する人によっては、その予算に確実に収まるように、最初から全て低予算のものばかりを選んでいくように誘導をしむけていきます。

そうしないと、せっかく打合せをしてプランをつくり、見積もりをだしても、予算をオーバーしてしまい、またプランを一から作り直さなければならないからです。

これは、売上主義の業者さんからすると、とても手間がかることであり、避けたいことの1つでしょう。

ですから、最初から安パイな予算で落ち着くように誘導をしながらプランを建てていくことになるのです。

後悔する原因2:高いイメージが先行しすぎてしまい、そもそも選択肢の中から外してしまう

また、値段のイメージが先行しすぎてしまうことも後悔してしまう大きな原因です。

本当は、あの材質を使いたいけれど高そうだから、やめておこう・・

という具合に、高そうだというイメージがあまりにも先行してしまい、それを最初から選択肢から外してしまうケースがかなり多くあります。

そして、家ができた後にフタをあけてみると、実は希望の材質を使ってもそこまで高くはなかったということが判明することもしばしば。

描いている夢が大きいだけに、その夢をいかにして削って予算内におさめるか、というネガティブな打合せとなってしまいます。

ですので、設計士との打ち合わせ段階で、高そうだから選択肢からはずしてしまうのではなく、たとえ高そうであってもあなたの希望をしっかりと伝えて相談してみることが何より大切になります。

このように、妥協に妥協を重ねながら、プランニングをしていくことになり、立てた後に後悔するケースが後を絶ちません。

では、ほんとうに納得した満足のいく後悔のない家づくりには、何が大切になるのでしょうか。

後悔しない家づくりのための4ステップ

それでは、ここからは後悔しないたいめにも絶対に押さえておきたいポイントをわかりやすく4つのステップに沿ってお届けしていきたいと思います。

そもそも大前提として、「高そうだからやめる」「予算に縛られすぎている」という理由で理想とあまりにもかけ離れたプランを作ることはやめましょう。

これこそが、後悔してしまう一番の原因になるからです。

そして、理想を追求しながらも、最終的には予算内におさめる方法が絶対にあるので、簡単に理想のマイホームを諦めてしまうには余りにももったいないのです。
建築コストはトータルで考える

そこで大切になる考え方は、建築コストは、トータルで考えるということです。

たとえば、フルオーダーメイドのキッチンをつくることで、そこに大きな予算が必要となっても、他の重要でない部分にかける予算を減らせば、そのトータルの予算を当初の予算に収めることができるのです。

そして、そのタートルのコストは、実際、基礎の部分から最後の部分まで、全てを積算しみない限りわかりません。

だからこそ、最初から妥協を重ねるのはよくないのです。

ステップ1:予算オーバー前提で夢を描いてみよう

私がお客様に最初にご提案することは、「まずは予算オーバー前提で理想の家を描くことからはじめましょう」ということです。

設計事務所に依頼されるということは、家に対するこだわりや、思い、理想があるはずです。

その思いを一度描くことからスタートします。

「あれもダメ」「これもできない」「これは高いから省きましょう」というネガティブな打合せではなく、

「これがいいな」「あれもいいね」「本当はこんな家にしてみたい」という夢が膨らむ打合せです。

たとえば、
「趣味のガレージスペースに一番こだわりたい」
「キッチンはフルオーダーメードがいい」
「リビングはこんなのがいい」
「実はホームシアターに憧れている・・・」

などなど、あなたなりにこだわりたい部分が必ずあるはずです。

このようなことを話しながら、色々風呂敷を広げながら打合せをしていきます。

ステップ2:描いた理想をリストにして整理します

次にすることは、それらのやりたいことや希望をリスト化してテーブルの上に並べてみます。

ご自身でやられてもいいですし、私の場合は施主さんに理想の家についてお話しいただきながら、私の方でリストにして整理をしていきます。

このようにして、客観的に目に見える形でリストにしていきながら整理をしていきます。

ステップ3:全体のリストを見渡しながら優先順位をつけてみます

そのリストができたなら、そのリストの1つ1つを、丁寧にドラフト会議にかけていきます。

つまりは、その希望することや要望リスト、1つ1つに優先順位をつけていくということです。

1つ1つ優先順位をつけていくと、施主さんの理想の家にとって、

・どんなことが大切なのか、
・何があることが大切なのか

がだんだんと明確に見えてきます。

また反対に、

改めてよく考えてみると、大きなコストをかけてまで実現したいと思わないような事柄も見つかり始めます。

たとえば、

「フランスから仕入れた大理石をつかえば、もちろん高級感を演出することができ、気分良く過ごせるようになるかもしれませんが、そこに予算をつかうのであれば、趣味のガレージでバイクをかっこよく見せるための空間づくりのお金をかけたほうがいい」

「トイレの優先順位は低くて良いから、そこで浮いた予算でシアタールームが作れそうだな」

「フルオーダーメイドのキッチンは外せないけれど、子供部屋については、そこまでこだわらなくていいから予算を落としたい」

という具合に、

・自分の理想の家にとって何が大切か、
・どこの空間に費用をかけたいか
・譲れないものはなにか、

反対に、

・実は不必要だったものや、
・そこまでして欲しくはないもの
・妥協してもそこまで問題にならないもの

なども見えてくるので、施主さんの中でも整理されていきます。

そして、このような話合いができれば、予算を調整することができます。

一番こだわりたい部分にたっぷりとお金をかけて、施主さんのなかで妥協をしても問題ない部分にかける予算を減らし、プランをつくっていけば、当初の予算に添いながら、限りなく『理想の家』に近づいていきます。

また、施主さんと一緒に、全てを吟味して決めていくので、
建てたあとに「あれをやっておけば良かった」と言う後悔が生まれることはありません。

もし、このようなプロセスを飛ばしてしまうと、

もし、このようなプロセスを飛ばしてしまうと、最初から予算に収まるようにプランをつくっていくので、全て平均的な価格のものばかりを選ぶようになり、結果、悪い意味で無難な家ができあがってしまい、「本当に設計事務所に頼む必要があったのか・・」というくらい個性の無い家となってしまうのです。

ステップ4:最後の帳尻を合わせる

そして、最後のステップです。

ステップ3を経てプランができた段階で、始めて見積もりを作ることになりますが、その見積もりが、当初の予算をオーバーしてしまう場合は、もう一度設計士と話し合いましょう。

ステップ2であげた、要望リストを見直して、さらに予算を下げるための方法はないか、設計士と話し合いながら再検討をかけていきます。

このようにして、希望の予算まで帳尻を合わせながら、理想のプランを作っていきます。

まとめ

いかがでしょうか。このようにしてプランを設計していけば、後悔しない家を誰でも作れるようになります。

後悔しない設計士の選び方

そこで、最後に注意点を1つ、お伝えします。

先ほど挙げた4ステップに添いながらプランニングをしていけば、必ず理想に近い家を作ることができます。

ですが、そこには、一緒に1つ1つを検討して、必要であれば、プランを練りなおし再見積もりをしてくれる設計士の存在が必要になります。

たとえ、一手間、二手間、増えたとしても、最後まで「施主さんにとっての理想の家をつくる」ために親身になって対応してくれる設計士です。

家は一生ものの買い物であり、建てて終わりではありません。
建てたあとに、リフォームする場合もあれば、修繕が必要な場合もあります。

そんな時も、親身になって相談でき、長い付き合いができる設計士を選ぶことがポイントです。

この辺りのことを意識しながら、最初から1人に絞らず様々な設計士の話を聞いてみて信頼できる設計士を探しましょう。

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